感情のごみ箱。音楽と映画と小旅行がオアシス。映画の評価は★=1.0、☆=0.5で5つが最高。(+は個人的趣味加算・笑)

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2006-07-08 Sat 18:48
「セーヌ湾の反乱 ホーンブロワー・シリーズ」

●セーヌ湾の反乱 ホーンブロワー・シリーズ<9>
●セシル・スコット・フォレスター/高橋康邦訳
●出版日:1977.4.30(1946)
●出版社:ハヤカワ文庫NV
●評価:★★★★☆


サーロレイショ・・・美味しそうな言葉だな(笑)
スモールブリッジ館のサー・ホレイショをいっしょくたにした、召使い達の造語らしい(笑)
19世紀英国産最高級サーロレイショ。ただし生もので癖が強いから、焼き具合はウェルダンで(・∀・)
・・・意味不明ゴメン。真面目に感想を書くには勇気がいるのよ、今回(泣)

そう、ついに来てしまった・・・。
ふつうネタバレしても一向に意に介さない私でも、このシリーズは絶対ネタバレしたくないと思って、出来るだけ書評を読まずに読み続けてきた。
にも関わらず、「ネタバレなし」と銘打ったある書評でなされていたネタバレ・・・。
それを読んだ時、あまりのショックと怒りで、抗議のメールでも出そうかと思ったくらいだった。
都合良くそのネタバレを忘れていたものの、前作を読んでいる途中、ふと思い出してしまったそれが、まさに今作の内容で・・・。

この9巻は、大きく3部に分けられると思う。
前半は、タイトルの通り、セーヌ沖で起きたフレーム号反乱の鎮圧に向かうホーンブロワー。
中盤で話は急転。話は、フレーム号の反乱鎮圧から、ル・アーブル市の帝国への反乱すなわち王政復古の指揮へと発展する。
しかしそれからさらに急転が待っていて、後半、彼はフランス軍に捕らえられ、ついに逃れることの出来ない銃殺刑を言い渡される――。
きっと読み終えた後、疲れと虚脱感に苛まれ、これまでにないあまりのオープン・エンドに途惑うことでしょう。
でもホーンブロワーファンならこの巻を読まないわけにはいかないと思います。
何回も言うけど、ホントに、発表順ではなくシリーズの並び順に読んだ方がイイ!!(ノд`)゜
以下、激しくネタバレしてます!!未読の方はぜ~~ったいに読まないで下さい><
我らがホーンブロワーは、前作「決戦!バルト海」から引き続き戦隊司令官(Commodore)。
しかし前作のノンサッチ号のように、戦列艦にペナントを掲げるわけではなく、ポルタ・コエリ号というブリッグ型スループ艦にそれを掲げての出航。
ホワイトホールから与えられた任務は、姉妹艦フレーム号で起きた反乱の鎮圧。
反乱といえば、ペストやチフスといった感染症と同じ様に、放っておけば次から次へと伝染する悪病のようなもの。実際、ホーンブロワー自身、海尉時代にレナウン号でその悲惨さは体験済み。

しかしタイトルの示すこの内容は、実は前半部分だけ。
中盤は逆に、彼は反乱を喚起・指揮する立場へ転換するから。
反乱とはつまり、ナポレオン帝国への反乱
ル・アーブル市を舞台に、ブルボン家の王政復古、ルイ18世の王位要求をフランス市民に喚起し、ナポレオンの退位と戦争終結を最終目標に据えた計画の指揮を執り、ブッシュ率いるノンサッチ号も援助に加わって――。
ちなみに今作、ブッシュはもちろんブラウン、フリーマン、グラセー伯爵とマリー嬢そしてペリュー提督といった、ホーンブロワーにとって大切な、懐かしい面々が沢山登場します。
まさに、彼の海での戦いの集大成、という具合に・・・。

でもね・・・出逢いの裏には別れがある。
親友ブッシュの死
これね・・・もうどうしようかと思った。
しかも、最後の最後までホーンブロワーと読者に希望を持たせるかのように、生き残った誰も、ブッシュの死に様を見ていないの。
死んだとの証言もなければ、彼の死を示すのは「ノンサッチ号の誰も戻ってこなかった」ことと、焼け落ちた無人の町の様子だけ。実際にブッシュが砲弾に当たって肉片になった描写もなければ、マスケット銃で胸を撃ち抜かれた描写もない。
それでも、ブッシュは間違いなく死んだ。
この、美しくもなければ、ホーンブロワーとのドラマチックな死に際の会話もない、ただ事後的に知らされるだけの殺伐とした死の描き方が、本当に上手いし、残酷だ。
戦場で、しかも別の場所でそれぞれの任務を遂行している友の死に立ち会えるなんて、恐らく砲弾に当たるより確率は低いだろう。
ホーンブロワーは司令官として、ブッシュの、ただ一人の親友の死を報告として知った。
司令官としての任務をどうしてかこなながら、心はブッシュの死を嘆き悲しんで立ち往生している――ここの心理描写の鋭いことと言ったら、やはりフォレスター氏は天賦の才を持っていたんだと改めて感じさせられた。
海軍ホーンブロワーの彼が彼たる所以は、まさにここに極まれりといったところ。

「準備完了です、司令官」
「さよなら、ブッシュ」
「さようなら、司令官」


最後に交わした会話。ネタバレで知っていたから、このくだりが痛くて思わず本を閉じてしまった。

戦争が終わったら、桟橋の上手のあの岸辺に小さな記念碑を建てよう。
叶うことなら、廃墟と化したこの町が二度と再建されないように。
それこそ我が友を記念するこの上なく心打つ碑となろう――それか、あるいは髑髏のピラミッド。


そしてブッシュの死んだ場所に戻り黙祷を捧げるホーンブロワーのこの呟きに・・・涙。
ここ以降、ブッシュの死が心に重くのしかかり、読みながら思い出しては泣いてしまうことがしばしば(´д`)ホーンブロワーの心と読者のそれがシンクロしてしまうのですよ。

後半、話はしかし、ホーンブロワー卿、つまり貴族になった彼をさらに失意の底に沈ませる。
彼はブッシュを失い、後半、あのマリーも失うのです・・・。
7巻「勇者の帰還」のロアール河の脱走劇とこの話がリンクしているのは、脱走劇でホーンブロワーとブッシュ、ブラウンの友情を思い出させて余計に辛い。(この辺もフォレスター氏の才が垣間見えるね。)
改めてグラセー伯爵との親愛、マリーとの愛(…)を確認した後、彼らを襲う悲劇。
ホーンブロワーはグラセー伯爵とともにフランス軍に捕らえられ、問答無用の軍法会議で銃殺刑を言い渡される・・・。
”海賊”と扱われ、薄暗い牢屋でどんどん弱っていく彼。
失った大切な人々――マリア、マリー、そしてブッシュを思い出して、自分に関わる人々が死んでいくことを自分の責任とし、自分を責め続ける。

「息子よ、わたしの息子よ。わたしのことを許しておくれ」
「お許しすることなどありません、父上。お許しを乞うのは、わたしのほうです」


これは法廷に向かう直前、グラセー伯爵とホーンブロワーがすれ違いざまに交わす会話。
父親を早くに亡くし、ずっと孤独に生きてきた彼が「伯爵から”息子”と呼ばれることも少しも奇妙に感じられなかった」なんて、ものすごい感動しちゃった。

さてしかし、この巻が面白いのは当然としても、一つ、気になるのが終わり・・・。
いやいや、オープンエンドも甚だしいだろこれ!!(((;゚Д゚)))・笑
上手いっちゃ上手いのよ!!すごく切れ味のいい終わりだとは思う。
どんでん返し?いやいや、流れとしてはごく当然。
にしたって、ここから彼はどうしたのさ?(笑)立てない程に弱っていた彼、大切な者をいっぱい失った彼。牢獄の彼――ど、どうなったんだろう?
続きは10巻で説明されるんだろうか。提督になった彼の回想とかで?
・・・いや、今までの感じからすると、おそらくこのままオープン・エンド(=見る者の解釈に任せた終わり)なんだろう。フォレスター氏に完敗(乾杯)。
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